2018年度 理事長
くらまた やすし
倉又 康
【はじめに】
1967年10月23日、全国で362番目のLOMとして糸魚川青年会議所(以下、糸魚川JC)は誕生し、昨年には50周年を迎えることが出来ました。その50年という長きに亘り、ご尽力されてこられました先輩諸氏に感謝いたします。また、この50年の歴史は「明るい豊かな糸魚川」の実現に向け活動してこられました先輩諸氏と、地域の皆様のご理解とご協力によって繋がれてきました。この歴史をしっかりと受け継ぎ、次の世代へと引き継いでいかなければいけません。
私の印象に残っている言葉に「お前がここで勉強しているのは料理の歴史を繋いでいくためだ」というものがあります。家業の料理屋を継ぐため、京都で勉強の日々を送っていたときに先輩から言われた言葉です。京都で学んだことを糸魚川に持ち帰り、糸魚川の食材とともに料理に活かすことを考えていた私にとって、先輩の言葉は戸惑うと同時になかなか理解できませんでした。それから十数年が経った今では、自分が料理の仕事を続ける限り、良くも悪くもどんな形、内容であっても料理の歴史は繋がっていくのだと理解し、日々料理とは何か、お客様や地域にとってどのような内容が良いのかを考えています。そして、自分は微力ながらもその歴史の一端を担っていることに誇りを持っています。今から8年前に糸魚川JCに入会し、活動を続けるうちに料理に対する考えはJCにも通じるところが多いと思うようになりました。我々が活動を続ける限り、どのような内容であれ歴史は繋がっていきます。より良い未来のためには、ただ漠然と活動するのではなく、歴史の一端を担っていることに対する自覚と誇りを持ち、明確なビジョンをもって活動することが必要です。
51年目の本年度は、これまでの50年の歴史をしっかりと受け継ぎ、糸魚川JCがこれからもより良い歴史を繋いでいけるように、新たな一歩を踏み出してまいります。
【活動を運動として繋げられる組織として】
青年会議所(JC)は明るい豊かな社会を築くために活動を展開しています。JCしかない時代からJCもある時代へと変化してきた中で、JCの特徴の一つに、活動を運動に繋げられる組織であることが挙げられます。私は、JC運動とは我々の活動が市民の皆様や地域を巻き込み、それぞれが自発的に活動を展開していくことであると考えます。そのためには、地域に大きな影響を与えるより良い事業を行う必要があります。
そこで本年度は、地域に大きな影響を与える、より良い事業を行うために、組織基盤の強化と会員拡大の取り組みを行うことで、活動を運動に繋げられる組織としての一歩を踏み出します。
まず、組織基盤の強化につきましては、会の円滑な運営を行うのはもちろんですが、事業を組み立てていくための事業構築に焦点を当てます。組織内部に目を向けると、地域の課題について調査研究を行い、熱く議論を交わし、より良い事業に向けて事業構築を行っていますが、なかなか運動に繋がっていかないという現状があります。そこには事業を構築していく段階に課題があるのではないかと考えます。JCとして運動に繋げるためには、質の高い事業構築を行い事業に反映できることが必要であると考えます。そのためには、これまでの50年の活動を見つめ直すとともに、運動に繋げる事業とはどのようなものかについて学びます。また、我々の活動をより広く地域に周知するために、効果的な広報とはどのようなものかを検証し、実践していきます。
次に会員拡大につきましては、青年会議所は40歳卒業というルールの中で活動しており、新たに会員が入会しなければ、会員数は減少していきます。その中で、運動に繋げていくためには、より多くの人材が必要です。それぞれが持つ発想を取り入れ、活発な議論を交わすことでより良い事業構築をすることができます。また、地域により良い事業を行うための原動力にもなります。
しかし、会員拡大は専門の委員会を設けた年や、意識の高いメンバーのみが取り組んでいる現状があり、そこには誰かが取り組んでくれるだろうという意識や、一歩踏み出せないといった課題があります。
そこで、メンバー一人ひとりが当事者となり、常に会員拡大を行うための強い想いが持てるように意識の向上を図ります。また、拡大に一歩踏み出せるようになるための取り組みを行います。
組織基盤の強化と会員拡大の意識の向上を図り、地域に大きな影響を与えるより良い事業を行えるようになることで、活動を運動に繋げられる組織として一歩を踏み出します。
【豊かな自然を守り伝えていくために】
糸魚川は海も山もあり、ユネスコ世界ジオパークにも認定されるほど特異な地形や地質を持つ地域です。その特異な地形から得られる食材を元にした郷土料理や、縄文時代から続く歴史、文化なども多く存在しています。また、四季折々を彩る花々や草木、そこに棲む様々な動物などは特筆すべきものであり、他地域では保護の対象になっているものや、絶滅危惧種として指定されているものも存在する、豊かな自然が残る地域です。
しかし、その豊かな自然は今、天候や気温の変化や外来動植物の流入、ライフスタイルの変化などの多くの要因により、生息場所の減少や、生態系のバランス崩壊などのために、生存の危機に瀕しているものもあります。そして、そこには我々自身が自然に触れる機会が減ってきていることもあり、その豊かさに気づいていても、現状はあまり知られていないという課題もあります。一度失ったものを取り戻すことはとても難しいことです。ですが、それ以上に、食や文化において恩恵を与えてくれ、子ども達や我々大人にも様々な体験を通して成長の機会を与えてくれるだけでなく、地域を学び郷土愛を育む場などとしても活用されているこの自然を守り後世に伝えていく必要があります。
そこで本年度は、地域の人々に向けて豊かな自然を守り伝えていく機運を高めるために、まずは、豊かな自然がある一方で、危機に瀕している現状もあることを調査します。次にそれらが実感できるような活動を行うことで、後世のために守り伝えていくことの必要性を訴えていきます。
糸魚川の豊かな自然をより良い形で後世へと引き継いでいくための一歩を踏み出します。
【災害に対する被害に迅速に対応できるネットワークの構築】
2016年12月22日は糸魚川市民にとって忘れることができない日になりました。午前10時20分に発生した火災は延焼や飛び火により拡大し、147棟の住宅や店舗を焼失させ、翌日にようやく鎮火し、のちに糸魚川市駅北大火と名付けられました。
当時糸魚川市内では、様々な団体が被災された方々や復旧のために活動をされ、糸魚川JCとしても社会福祉法人糸魚川市社会福祉協議会が立ち上げたボランティアセンターの運営や、ボランティアの受け入れ、情報収集、思い出の品探しなど活動のサポートをさせていただきました。
しかし、火災発生後の活動を振り返ると、我々糸魚川JCを始め多くの団体がどのような活動をすべきか悩み、対応に苦慮したことが思い出されます。
豪雨や台風、地震などの自然災害は毎年のように発生し、被害を小さくすることはできても発生を防ぐことはできません。また、災害対策マニュアルやハザードマップなどがあるものの、その災害がどのような被害を発生させるのかを全て把握することは困難です。被害が発生した際に、我々糸魚川JCも含めた団体が、それぞれの強みを発揮できるように連携することで、被災された方々への支援や、ボランティアセンターの運営サポートなどに迅速に対応することができると考えます。糸魚川市駅北大火から一年が経ち、復興に向けて動き始めた今だからこそ、この問題に取り組まなければいけません。
そこで本年度は、糸魚川で過去に発生した災害を振り返り、どのような被害があったのかを調査します。次に他の団体や組織と連携することでどのような活動ができるかを考え、被害に迅速に対応できるようになるためにネットワークの構築を図ります。
今回の糸魚川市駅北大火のように、災害はいつ発生し、どのような被害をもたらすかはわかりません。災害を想定し、被害に対して迅速な対応ができるようになることで、災害に対しても安心して暮らせるまちへ向けての一歩を踏み出します。
【メンバーの資質向上】
糸魚川JCが設立されて以来、時代ごとの諸問題に対し先輩諸氏が英知と勇気と情熱をもって取り組まれてきました。これまでの先輩諸氏が積み上げてきた知識やスキルは脈々と受け継がれ、現在の糸魚川JCにとって大きな財産となっています。
40歳卒業というルールがある中で、これまで受け継がれてきた知識やスキルを引き継いでいくことは、より良い活動を行なう上で欠かすことはできません。それは、ここ数年でこれまで会の中核を担ってきたメンバーが卒業を迎え、経験の浅いメンバーが中核を担い運営していかなければならない現状を見ても必要不可欠だと考えます。
そこで本年度は、様々な知識やスキルがある中でも、この組織がより良い活動を続けていくために欠かすことの出来ない議案書(事業計画書)に関する資料作成について焦点を当てたいと考えます。
現在、糸魚川JCでは事業を行うために様々な資料が作成され、それらを基に多くの議論を交わすことで事業の精度を高めています。何のために事業を行なうのか、そこに対する予算や費用対効果は適正なのか、しっかりとした計画になっているのか、伝わりやすい内容になっているのかなど、様々な視点から文書作成ソフトや表計算ソフトなど多くのツールを活用して資料を作成しています。そのような資料の一つひとつの精度を上げることは、個人のスキル向上はもとより、より良い活動に繋がります。
活動の中核となる分野だからこそ、今後、会を担うであろう経験の浅いメンバーを中心に改めて学ぶ場を設けることで継続できる組織への一歩を踏み出します。
【結びに】
昨年、糸魚川JCは設立から50年を迎え、今思うことは10年後、20年後はどのような組織になっているだろうかということです。今までと変わらず地域により良い活動を展開しているだろうと想像できますが、それは私たちがどのような活動を展開していくかが大事です。
本年度、第51代理事長を拝命するにあたり、今後60年、70年をより良い形で迎えられる組織となれるように、これまでの歴史に感謝するとともに、糸魚川に暮らす方々の明るい豊かな未来のために、より良い歴史を繋いでいくのだという想いを胸に、新たな一歩を踏み出してまいります。
一年間、どうぞよろしくお願い申し上げます。
<基本方針>
1 活動を運動に繋げられる組織になるために、組織基盤の強化を図るとともに、効果的な広報を行う。
2 活動を運動に繋げられる組織になるために、新たな人材の確保を行うとともに、継続して会員拡大を行っていくための意識の向上を図る。
3 糸魚川の自然の豊かさや、危機に瀕している現状を学び、実感できるような活動を行うことで、守り伝えていくための機運を高める。
4 災害によって発生する被害に迅速な対応ができるよう、それぞれの組織や団体が強みをより発揮できるネットワークの構築を図る。
5 今後も活動を継続していけるメンバーになるために、知識を深めるとともにスキルの向上を図る。