【はじめに】
1967年10月23日、糸魚川青年会議所(以下、糸魚川JC)は、全国で362番目のLOMとしてこの地に誕生しました。今日に至るまで糸魚川JCが活動を継続できているのは、先輩諸氏がまちのあるべき姿を目指し、志を同じくする仲間と共に積極果敢に挑戦し、その熱い想いと強い意志を未来へとつないできてくださったおかげです。糸魚川の明るい豊かな社会の実現を目指し、地域の健全な発展に弛まぬ努力をされてきた先輩諸氏に心から敬意を表するとともに、感謝申し上げます。
私たちは、どのような目的で青年会議所(JC)に入会したのでしょうか。その答えは様々であり、各々動機や意義は異なると思います。私は先輩から誘われ、自分の成長のため入会しました。しかし、JCでの活動を通じ、多くの仲間に出会い、学びや気づきの機会を得ることで、自己成長のために入会した目的がいつしか変わり、自己成長だけではなく地域や関わる人たちの成長や幸せも望むようになりました。そして、仲間と共に地域の様々な課題と向き合い、行動していく中で、自らの地域をより良く変えていくためには、私自身が更に成長しなければならないと感じています。JCへの入会はあくまで成長への第一歩であり、所属することが目的ではありません。私たち自身が成長し、まちのため、人のために貢献できる「人財」になることが求められています。そして、糸魚川JCメンバー一人ひとりの成長が社業や地域の発展となり、私たちが目指す明るい豊かな社会の実現につながると信じています。
人々の価値観やライフスタイルが多様化する現在、人口減少、少子高齢化、地域経済の縮小等の社会問題や社会ニーズはますます複雑化してきています。また、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響により、従来の経験だけでは乗り切れない急激な環境変化が起こっており、今後更なる課題に私たちは直面する可能性もあります。大きな壁に直面した時、弱気になってしまい目を背けてしまうこと、他人に任せてしまうことがあるかもしれません。しかし、この地域の希望溢れる未来を切り拓くのは、私たち自身です。そのためには、自己研鑽を繰り返しながら成長し、周りの人々を牽引できる地域のリーダーとならなければなりません。
JCには、自身の成長につながる機会が多くあります。しかし、その機会を活かし成長できるかは自身の行動次第です。私たちは、与えられた担いをできるかできないかで判断せず、自身の成長への機会と捉え、青年らしい英知と勇気と情熱を持って“やる”と決断し行動していかなければなりません。自ら成長の機会を掴み取り、視野を広げ、仲間と共に未来を語り、自己成長へつなげましょう。そして、その成長ができるこの組織に所属することに誇りを持ってJC活動に邁進しましょう。
本年度、「KEEP GROWING」のスローガンのもと、メンバー一人ひとりが成長できる一年となるよう、私自身もリーダーシップを発揮できる人間へ更に成長し、この地域の希望溢れる未来の実現に向けて、同じ志を持つ仲間と共に全力でJC活動に取り組んでまいります。
【一人ひとりが成長できる組織づくり】
JCは明るい豊かな社会を築くために活動を展開しています。その活動をより良くするためには組織の活性化が必要です。組織を動かすのは人であり、事業を実施し効果を出すのも人です。メンバーの成長は、糸魚川JCにおいて必要不可欠な要素であり、会の根幹ともなるべきものです。だからこそ常にメンバーが成長できる組織づくりに努めなければなりません。
単年度制・40歳卒業というJCならではのルールの下、メンバーは毎年様々な役職や役割での経験を通じて、地域や組織の課題に向き合い、仲間と共に真剣に議論を重ね、事業の計画・実行や各種会議の運営を実践します。そして、その過程を通じて、様々な知識やスキル、物事の捉え方や考え方など、多くの学びや気づきを得ることができます。このように、JCには活動を通じて成長できる機会が多くあります。メンバーがこの機会を活かし成長につなげるには、JC活動にやりがいや価値を感じ、活き活きと活動できる環境を整える必要があると考えます。
近年、糸魚川JCは様々な立場のメンバーで構成される組織に変化してきました。仕事や家庭の事情等、全てのメンバーが異なる環境で各々限られた時間を調整しJC活動をしています。しかし、活動への意欲はあるものの「時間がない」「自由が利かない」などの理由で参加・参画できないメンバーがいる現状もあります。そのような中、適切なICTツールを有効活用することで、時間や場所にとらわれず、活動の内容や進捗状況、各自の担いを情報共有することができるとともに、会議参加や資料作成など、柔軟にJC活動に参加・参画できると考えます。また、在籍年数の短いメンバーが要職を担う機会が増えている現状を踏まえ、ただ参加・参画しやすい環境を整えるだけでなく、組織運営や事業構築についての理解と共有を図ることも大切です。JCの目的や目的達成に向けたアプローチの方法についての理解を深めることでメンバー個々の力が活動に活かされ、その結果、より良い活動の実施につながるだけでなく、メンバー個々の成長にもつながると考えます。
そこで本年度は、グループウェアやWEB会議システム等のICTツールを有効活用し、メンバーがJC活動に参加・参画しやすい環境を整え、活動の効率化を図ります。現在、糸魚川JCが活用している既存のICTツールの見直しも含め、より効率的な運営体制を築いてまいります。また、組織運営や事業構築に関する知識の向上を図り、メンバー個々の力を最大限に発揮できる環境を整えてまいります。これら二つの取り組みにより、メンバーがより活き活きと活動し、成長できる組織づくりを目指してまいります。
【一人でも多くの仲間と更なる成長を】
近年、会員の減少は全国的にも大きな課題として取り上げられる中、糸魚川JCも例外ではありません。糸魚川JCもこれまで会員拡大を重要課題の一つとして取り組んでまいりましたが、本年度は○○名でのスタートとなり、会員数70名を超えていた2012年度からの9年間で、会員数は約半数まで減少しています。改めて、会員数を増加させる必要性をLOM全体の問題として共有する必要があります。
そもそも、会員拡大はなぜ必要なのでしょうか。会員拡大とは単に組織の存続のためにする活動ではありません。自分たちの住むまちのより良い未来を想い、行動してくれる「人財」を一人でも多く育むためにする活動です。人は様々な経験と多くの人との出会いの数だけ成長します。多くの仲間と共に活動することで新しい考え方や視点が身に付き、お互いを磨き支え合うことで自己成長につながります。また、自己成長は組織を発展させ、JC運動をより強く大きなものとします。しかし近年、糸魚川JCが抱えている会員数の減少は、メンバーの自己成長はもとより組織を発展させるうえで切実な問題です。会員数減少の要因は様々ですが、私はJCの活動内容や魅力を十分に伝えきれていないことが、要因の一つではないかと感じています。私たちは、JCの魅力を自身の言葉で語り、伝えることができているでしょうか。糸魚川JCの活動に共感していただけるような情報発信ができているでしょうか。おそらく、“JC”や“青年会議所”という名称を聞いたことがある人は大勢いますが、実際の活動内容を知っている人は関係者を除けば少ないでしょう。その結果として、会員拡大が難航していることが現状です。そのため、糸魚川JCの活動内容や魅力を正しく伝えていくことが必要であると考えます。また、ただ仲間が増えれば良いというものではありません。各々の成長をお互いに支え合える仲間としての人間関係を構築することが大切です。そして、そのことがメンバーの定着につながると考えます。
そこで本年度は、糸魚川JCの公式ホームページやSNS等を活用し、糸魚川JCの活動内容や魅力を効果的に発信します。そして、LOM全体で会員拡大に取り組むべくメンバーの意識を高め、このまちの希望溢れる未来を信じ、共に行動してくれる仲間を多く迎え入れます。さらに、メンバーの定着につなげるため、メンバー相互の交流を図る機会を設け、成長を支え合える関係を構築してまいります。
【働きがいのある職場づくりに向けて】
近年、本格的な少子高齢化を背景に労働力不足が深刻な社会問題となっており、政府は一億総活躍社会の実現を掲げ、働き方改革により働き手の増加と労働生産性の向上を進めようとしています。糸魚川市においても少子高齢化に加え、都市部への人口流出による人口減少により、産業の担い手不足や若い世代の減少などが起こり、地域の活力低下の危機にあります。このことは、都市部の大企業に比べ人材の確保がより困難な地方の中小企業においては、とりわけ深刻な経営課題となります。また、今の働き手はワークライフバランスの概念が浸透し、働くことに対する価値観が多様化しています。この多様性の時代において、これからは働くことを希望するすべての人が意欲と能力を発揮できる組織を構築していかなければなりません。
担い手不足はいまや糸魚川市の全産業の課題と言えるでしょう。今後、より人材確保が難しくなり、人材の定着を図ることがますます重要になる中で、働く人が働きやすさと仕事へのやりがいを感じ働くことができる働きがいのある企業を作り出していくことは急務です。働く人が意欲と能力を発揮できる組織となるためには、目指すべき組織の在り方に沿った人材の採用・育成・風土づくり・人間関係の構築などに取り組む必要があります。さらに、企業を取り巻く環境変化に対応しながら、活き活きと働ける職場環境を整えることが重要です。そして、これら取り組みを行うことが企業の組織力を強め、生産性を向上させることにもつながっていくと考えます。
JCは様々な業種の代表者や経営の中核を担うメンバーが多く所属しています。私たちJCメンバーが、今後ますます進むであろう「働き方の多様化」に柔軟に対応するための知識・見識を身に付け行動することが、自社の発展、さらにはこの地域社会の発展に貢献できると考えます。
そこで本年度は、企業の人材と組織について、現状と課題を調査・研究します。その上で、メンバーに対して、組織を目指す方向に成長させていく方法を学ぶとともに、多様化に向けた環境整備について意識や知識の向上を図る機会を設けます。企業・働き手双方の希望溢れる未来に向かって、働きがいのある企業の実現につながるよう活動してまいります。
【糸魚川への移住促進に向けて】
日本の総人口は2008年をピークに減少に転じており、今後も大幅な減少傾向が見込まれます。地域をどう維持し発展するかという問題意識のもと、2014年度に地方創生政策が本格的に始まり、全国の地方自治体で人口減少対策としての地方移住者受け入れの動きが加速しました。
そのような中、都会にはない豊かな自然の中での職住近接の暮らし、子育てに適した自然環境、就農・就漁等への起業など、より良い人生を歩むための新しい生活の場を求めて地方に移り住む人が今少しずつ増えています。内閣府に設置されている「まち・ひと・しごと創生本部」が一都三県(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)在住の20歳~59歳の男女1万人を対象に行った調査(2020年実施)においても、地方移住に関心を持っている方が49.8%と約半数おり、特に子育て世代の関心が高まっている傾向があります。
今は首都圏から地方に人を呼ぶチャンスです。ICTを活用したテレワークが推進され、勤務先がある首都圏にいなくても働ける時代になってきました。多様な価値観が認められる社会になり、地方で自分らしく生きることを選択する人も珍しくありません。また、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響下におけるテレワークの急激な普及から「都会ありきの生活」を見直す機運の高まりや、「密を避ける生活」への希求もあり、一気に地方移住への関心が高まっていると考えます。今後ますます、多くの地方自治体が移住誘致に力を入れるでしょう。
糸魚川は豊かな自然に囲まれ、四季折々の農作物や海産物も豊富で、古くより伝わる伝統・文化もある多くの魅力を持った地域です。新幹線や高速道路もあり、首都圏への移動も遠くはありません。また、新潟県は移住希望地ランキングで毎年上位になっており、糸魚川市においては住みよさランキングで県内1位を獲得し、移住者も近年増加傾向にあります。その中で、糸魚川市が移住先として選ばれるには何が必要でしょうか。「ここは自然が溢れていて、ゆったりとした人生が送れます」といった漠然とした発信ではなく、ターゲットを明確にし、その層の人たちを惹きつける情報を、糸魚川の特性や施策などの魅力と絡めて訴求しなければなりません。そのうえで「糸魚川のありのままの日常と暮らしている人々の幸せそうな姿」を移住希望者に共感していただくことが必要であると考えます。
そこで本年度は、糸魚川の定住人口拡大に向け、糸魚川の移住に関する現状や他地域の取組みを調査し知識の向上を図るとともに、首都圏の移住希望者から糸魚川での生活に共感が得られるような情報発信を行い、移住先としての糸魚川の認知度向上を図ってまいります。
【結びに】
JCには多くの経験や学びの機会が溢れており、その全てが成長の機会です。楽しいことや望むことばかりではなく、苦しさや厳しさを味わうことも少なくありません。しかし、それを負担と捉えるのではなく、困難や苦難を乗り越えた先にある自身の成長した姿を思い描きながら活動することが大切です。40歳までの限りある時間の中で、決して少なくない時間を費やしてJC活動をするのであれば、JCに求めるものはメンバーそれぞれにとって大きなものであるはずです。望むべき自身の未来とまちの未来に向けて、自ら成長の機会を掴み、仲間と共に糸魚川の明るい未来を語り、自己成長へつなげてまいりましょう。
本年度、第54代理事長を拝命するにあたり、自分自身を大きく成長させてくれた糸魚川JCや支えてくださった全ての方々への恩返しの気持ちを忘れず、地域のため、糸魚川JCのために全力でJC活動に邁進してまいります。
一年間どうぞよろしくお願いいたします。
<基本方針>
1 メンバーがJC活動にやりがいや価値を感じ、活き活きと活動できる組織運営への礎を築く。
2 効果的な情報発信と全メンバーで取り組む会員拡大により、10名以上の入会を目指すとともに、メンバー同士の交流を通じてメンバーの定着を図る。
3 働きがいのある職場環境づくりに向けたメンバーの意識・知識の向上を図る。
4 首都圏の移住希望者に糸魚川に住み暮らすことの魅力を発信する活動を行い、移住先としての認知度向上を図る。